黒澤明 DVDコレクション 34号『天晴れ一心太助』 [分冊百科] epubダウンロード

黒澤明 DVDコレクション 34号『天晴れ一心太助』 [分冊百科]

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内容紹介 日本が誇る『世界のクロサワ』作品をDVDとマガジンで。 監督全30作品を完全網羅。 黒澤明 DVDコレクションを創刊します。 黒澤明が世に送り出した 珠玉の名作が、今、蘇る! 50年間にわたって30本の監督作品を世に送り出した黒澤明。 時代劇、現代劇、アクション、サスペンス、人間ドラマ・・・ さまざまなジャンルにおいて 黒澤明が生み出した名作の数々は、 その妥協を許さない演出、ダイナミックで美しい映像表現、 圧倒的な迫力によって観る者すべてを魅了します。 本シリーズでは、世界各国の名だたる映画人がリスペクトする巨匠が生み出した、 一度は観ておきたい傑作の数々を収録したDVDと、その魅力をさまざまな角度から解説したマガジンをセットでお届けします。 【収録作品】 1号 「用心棒」 2号 「七人の侍」 3号 「赤ひげ」 4号 「椿三十郎」 5号 「天国と地獄」 6号 「羅生門」 7号 「乱」 8号 「隠し砦の三悪人」 9号 「生きる」 10号 「蜘蛛巣城」 11号 「醉いどれ天使」 12号 「野良犬」 13号 「静かなる決闘」 14号 「悪い奴ほどよく眠る」 15号 「影武者」 16号 「生きものの記録」 17号 「どですかでん」 18号 「どん底」 19号 「わが青春に悔なし」 20号 「素晴らしき日曜日」 21号 「白痴」 22号 「姿三四郎」 23号 「續姿三四郎」 24号 「デルス・ウザーラ」 25号 「八月の狂詩曲」 26号 「一番美しく」 27号 「醜聞<スキャンダル>」 28号 「虎の尾を踏む男達」 29号 「夢」 ※特別収録『MAKING OF DREAMS』 30号 「まあだだよ」 31号 「馬」 32号 「肖像」 33号 「ジャコ萬と鉄」 34号 「天晴れ一心太助」 35号 「戦国無頼」 36号 「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」 37号 「姿三四郎」 38号 「戦国群盗伝」 39号 「殺陣師段平」 40号 「銀嶺の果て」
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朝日新聞出版の『黒澤明 DVDコレクション』の追加分としては第4弾(第34号)にあたる本号では、黒澤が、助監督からプロデューサーに転向した本木荘二郎のために脚本を提供した、喜劇王エノケン主演の『天晴れ一心太助』が登場。ありがたいことに、本作も、本シリーズのおかげで初DVD化された一本だ。その侠気で江戸に名を知られる魚屋の一心太助(榎本健一)は、町の易者に商売繁盛間違いなしと勧められて、陰気な「なめくじ長屋」に住む決心をする。しかし、太助は、女房のおなか(轟夕起子)と一緒に実際の長屋を目にし、予想以上の劣悪な環境に驚く。クセのある住人たちに加え、長屋の突き当たりには、化物屋敷と呼ばれる屋敷があり、そこに生える大きな銀杏の木が、完全に日照をふさいでいたからだ。さらには、屋敷には怪しげな浪人がたむろしており…。助監督時代から監督デビューして間もない頃にかけての黒澤は、師匠、山本嘉次郎監督の「監督になりたければ、先ず、シナリオを書け」という教えを守り、忙しい合間を縫って「シナリオを一生懸命書いた」そうだが(『蝦蟇の油』P194)、本作も、まさにそんな時期に書き上げられた一本。敗戦の色濃くなってきた時期ということで(1944年)、決して挫けない一心太助の姿を借りて、国民を鼓舞するような意図もあったには違いないだろうが、黒澤は、そういったイデオロギー的な部分には与せず、あくまで平明で明瞭なプログラム・ピクチャーとしての脚本を目指したようだ。大家のもとを訪ねてくる一心太助の冒頭場面からして、人物の紹介の仕方や性格付けが鮮やかで無駄がなく、場面の省略(長屋を貸すのを断られた太助が出て行き、場面が変わると、馬に乗った大久保彦左衛門を連れて来ていたり、化物屋敷に一人乗り込んだ太助が、場面が変わると負傷して寝込んでいたりする)や反復(太助が、何度も化物屋敷に道具と金を催促しに行っては、放り出さられたりする)の使い方も手際良い。一本気な太助の掛け声で、長屋の住人たちが一致団結して、不良浪人たちを懲らしめるという、単純極まりない話ながら、プログラム・ピクチャーとして実に巧みにまとまっている。佐伯清監督も、その脚本を小気味良いテンポとリズムで演出していて、作品全体の軽やかで弾んだような話り口が素晴らしい。初監督作とは思えぬ柔軟で、安定した演出ぶりだ。一心太助と言うと、現在では、どうしても、戦後、中村錦之助が演じた東映版のシリーズのイメージが強くなってしまうが、そそっかしさや道化的なコミカルな味付けはされているものの、根底にある男らしい一本気をきちんと表現していて、エノケンの太助像も魅力的で、実に板についてる。轟演じる女房のおなかとの丁々発止のやりとりも楽しいかぎりだ。黒澤の師匠である山本監督の専売特許のようなところがあるエノケン作品だが(黒澤自身も、何作かで助監督として付いている)、本作も、師匠の作品にも負けないエノケン主演の朗らかで楽しい佳作になっている。本DVDのマスターは、新しく起こしたマスターではなく、かつて、キネマ倶楽部から発売されていたVHS用マスター(当時は、1インチかD2だったはず)を若干、ブラッシュ・アップしたマスターを使っているようだ(デジタル・ベータカムかそこからデータ化されたProResファイルあたりだろう)。残念ながら、徹底的なレストアは施されなかったようで、細かいパラ、キズは依然残っているが、製作された時代を考えれば、許容出来る画質と言えるだろう。音声も、場面によってレベルが低くなったり、ノイズが残っていたりして、セリフが聞き取りづらいが、全体としては、大きな問題はない。ただ、マスターの問題で、19:00~19:07のエノケンが歌う場面の音声が途切れている。特典、予告編などの収録はなく、シリーズ・ガイドが収録(4分31秒)。ブックレットは、いつも通りの12頁で構成されていて、『乱』で末の方を演じた宮崎美子氏の黒澤への思いを語った記事が目玉になっている。奇しくも、今年(2019年)は、エノケン生誕115年でもあり、今後、本家の東宝からDVDが発売されるか不明なので、映画ファンは、何としても本号を手に入れるべきだろう。

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